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アルプス

信州・伊那の方面に出かける機会があった。戦後、詩の世界で存在感を持ったある「派」(と言ってよいのかどうか、詩に暗い私には自信があまりない)の中でも、代表的な方のお目にかかるためだった。詩についてでなく、その方が交際したある作家のことを聞かせてもらう――それが目的だった。

中央道をバスで行くと、木々が赤くなっていた。到着した街は小さく、人影も少なかった。以前訪ねた近くの街に似て、JRの駅の周囲に商店街が連なっていた。小さなロータリーにはバスとタクシーが佇んでいた。

タクシーに乗ると、山の方に向かって下った。谷が大きく広がっていた。天竜川が時間をかけて削ったのだろう、と思う。

その方は、大学を卒業してすぐに入った出版社と縁があるのであった。だから作家のことを伺う合間に、息継ぎのつもりで、その会社の話題を出した。

往時を思い出されたようだった。私は文字によって知り、また年輩の社員から聞いたりした諸先輩方(といっても私はダメ社員だったから、そんな風にいう資格はないのだけれども)の話をしてくれた。

話を聞き終えて外にでると、山肌が夕刻の色になっていた。帰りの車中、アメリカの作家、フォークナーの小説を読んだときのことを思い出した。
by tamaikoakihiro | 2013-11-06 02:50 | 作家 | Comments(0)

大東亜戦争と南方物語


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