大東亜戦争と南方物語


by tamaikoakihiro

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『レイテ戦記』(大岡昇平・中公文庫)をようやく読み終えられそうだ。何度か挫折していたから、嬉しい。

戦史室にあるだろう戦闘詳報の類かと思えるほど、細部に入り込んだ戦闘経過の記述にはついて行けないこともある。

地理感覚に優れた人だったのだろうと思う。フィリピンの山野を実地で知らない私からすると、どこにどの部隊がいるのかわからなくなる。

東京に衛戌地のあった第一師団(通称号「玉」)が、レイテの決戦に敗れてから、セブ島に渡っていたとは知らなかった。

セブ島は、このところ夏休みシーズンを当て込んでか、自動的に表示されるネット広告でよく見かける。美しい海があるらしい。

たかだか七〇年ほど前に、レイテからセブへと渡ろうと、必死の思いで船を操っていた若者たちのことを、想像する。
自分が四十を過ぎても、当時、必死の境地にあった人たちのことは、なぜか相当に年上の人のことのように思える。
(実際には二十歳から三十歳代の人たちが多かったのではないかと推測する)

『レイテ戦記』で面白いのは、西洋の文学に親しんだ著者らしい、怜悧な分析が随所に見られるところだな、と思う。

例えば――

しかしその(当時の日本の:引用者)軍事力の基礎は国民である。
徴集制度は、近代の民族国家の成立の根本的条件であるが、それが政治と独立した統帥権によって行われる
場合、反対給与を伴わない強制労役となる。

なるほど、と思う。イデオロギーによって書かれた言葉というよりも、自らが下級兵士として戦った経験が言わせた論だと思う。



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by tamaikoakihiro | 2017-06-27 22:13 | 作家 | Comments(0)