「僕にとってはその日その日が生涯なのだ」
これはラバウルで行われたBC級戦犯裁判で刑死したある陸軍中尉の言葉である。
『ラバウル戦犯弁護人』(光人社NF文庫・松浦義教)を読んでいて見つけた。
著者は二・二六事件に連座した疑いで代々木の陸軍刑務所(東京陸軍刑務所)に入っていたことがあるという。
敗戦後、ラバウルで戦犯弁護にあたったのである。文藻豊かな人だなと、ところどころの表現に接して思う。
死を確実なものとして意識した人たちの言葉は、老成していて、これが20代、30代そこそこの人たちのそれとは思えないものがある。
これはBC級サイゴン裁判でもそうだし、どこでも同じである。
若い人たちだけに、しかし、悲痛である。幼い子どもがいる人のものなども、なかなかに辛い。
BC級戦犯裁判は、このように覚醒した人々を生み、そしてその人々の多くを殺したわけである。