大東亜戦争と南方物語


by tamaikoakihiro

朝鮮新義州

『満洲難民 三八度線に阻まれた命』(井上卓弥・幻冬舎)という本を読んでいたら、古山高麗雄の初期の長編小説『小さな市街図』を思い出した。

「吉岡久治が朝鮮新義州の市街図作りを始めたのは、昨年の五月だった」で始まる小説である。新義州からの引揚のことも書いている。古山は新義州生まれだけれども、敗戦は仏領印度支那で迎えているから、戦後の朝鮮半島からの引揚は体験していない。

執筆にあたっては、関係者に取材して歩いたようである。

後半で主人公が、娘に新義州の話をしていて、通じない場面が出てくる。トーキーの映画館ができたときのこと、元旦に楽隊が門付けにきたこと……どれも娘には「?」なのである。

これは古山自身が体験したことなのかもしれないな、と想像している。戦後生まれに、植民地のことを話しても通じないのは不思議なことではない。断絶を感じたことだろう。

しかしそれを大仰に言い立てないのが、古山の作品の魅力だと思う、な。
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by tamaikoakihiro | 2016-06-04 04:56 | 作家 | Comments(0)