書評のこと
2015年 10月 28日
まずは「ああ、これで売れない本じゃなくなるかも」とほっと一息、救いに感じていたようにも記憶する。
4年間やらせてもらって、自分で「出したいです」と言ってやった本のうち、重版したものは一つもなかった。
センス、まるでないなあ。
退社して半年後だったか、担当したサイエンスノンフィクションの翻訳書が、ある賞をとったり、重版がかかったりしたのを知って、もう少し勤めていればよかったかなと思った。
しかしまあ、あの頃はベトナムにどうしても長期間行かなければならないと思い込んでいたから、「そんな長く休めるわけもなし、辞めちゃえ、辞めちゃおう」と思ったのであって、あれでよかったのである。
朝日新聞の書評欄で『戦捷小説家 古山高麗雄伝』が紹介された。
しかも『死なう団事件』という、ちょうどあの出版社を辞めてふらふらしている頃に、偶然読んで衝撃を受けた本を書いた高名の方に紹介してもらえて、幸運を感じています。
運がよかったと、改めて思う。十数年前、思い込みから会社を辞めて、あれも今の運につながっていると思うと、たいした年齢ではないけれども、感慨深いなあ。