大東亜戦争と南方物語


by tamaikoakihiro

天ぷらそば

2004年に、南洋学院のことを調べ始めたとき、ちょうどこれくらいの季節だったのだが、横浜港の見えるビルの大きな会議室で、卒業生の二人に会って取材した。

取材後、出てきたのは大きなエビ天が二本ついた天ぷらそばであった。私は緊張しつづけで、ろくに味わえずに、でも空きっ腹だったからしっかり頂いた。

お一人は、私の出身高校が旧制中学だったとき、そこを卒業して南洋学院に入り、サイゴンに向かったのだった。

淡々と話し、変な抑揚とは無縁の方だった。その場でその方はぽつりと仰った。

「兄貴は飢えて戦場で死んだ、僕が生き残って申し訳ない」

それが天ぷらそばを食す前だったか後だったかは、もう忘れた。音声を聞き直せばわかるかもしれないけれども。

この申し訳ないという気持ちは、戦争を経験した世代にある程度共通するものだと、自分なりの取材を通じて感じている。

申し訳ないと思ったってどうなるという意見もあるのかもしれないけれども、道理では片付けられないのが感情なのだろう。

最近は天ぷらそばを食べる機会がないが、今日は蒸し暑く快晴だったから、横浜港を臨む会議室と、「申し訳ない」とつぶやいた大先輩のことを、思い出した。
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by tamaikoakihiro | 2011-07-04 21:03 | 南洋学院 | Comments(0)